(1)学習指導要領における「持続可能な社会の創り手」について
予測困難な時代において、「持続可能な社会」を目指していくことは、全世界にとっても最重要課題の一つであり、その社会の創り手を育成していくということも、最重要事項となっている。『解説総則編』には、「急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては,一人一人が持続可能な社会の担い手として,その多様性を原動力とし,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される」と示されている。また、「これからの学校には,急速な社会の変化の中で,一人一人の児童(生徒)が自分の よさや可能性を認識できる自己肯定感を育むなど,持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる」とあり、「環境問題が深刻な問題となる中で,持続可能な社会の実現に努めることが重要な課題となっている」と示されている。これらのことから学校教育では、実際の社会や社会の中で生きて働く「知識及び技能」、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力等」、学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」を育成していくことが求められている(図1・図2)。
以上のことから、今年度の理論研究を進めていくにあたっては、子供に「『持続可能な社会の創り手』としての意識を高揚する教育の充実」を図ることを目標とし、意識を高揚する教育の充実を図ることを念頭に置きながら、学習指導要領に基づいた授業づくりに取り組み、「各教科における授業デザイン構想例」を提案することを目指していく。
(2)SDGs、ESDの観点からの「持続可能な社会の創り手」について
沖縄県教育委員会が令和4年度に発行した「SDGs実践事例集 OKINAWA2022」の「はじめに」には、「私たちの未来をよりよいものにするために、国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、現在、沖縄県は、全県をあげてSDGsの達成に向けたさまざまな取り組みを進めている」ことが記されている。SDGsとは、Sustainable(持続可能な)Development(開発)Goals(目標)の頭文字をとって付けられており、「世界や日本、沖縄県に存在する課題を自分事としてとらえ、持続可能な社会の実現に向けて自ら行動を起こせるようになることは、より良い社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けることにつながります」と、持続可能な社会の実現に向けた担い手を育成していくことの必要性が述べられている。
また、この実践事例集の中で、地球規模の課題を自分事として捉え、解決に向けて自ら行動を起こす力を身に付けるための教育「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)」について、「2015年に国連の全加盟国によって採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を実現するための人材育成としてESDはますます重要視されている」ことが記されている。このように「持続不可能な社会(図3・図4)」をどのように「持続可能な社会」へと変化させていくかが、全世界の人々に重要なことであると言える。
(3)「『持続可能な社会の創り手』としての意識を高揚する」こととは
「SDGs実践事例集 OKINAWA2022」では、「この世界的な潮流の中、2020年度から順次実施されている新しい学習指導要領には『持続可能な社会の創り手の育成』としてのESDの理念が盛り込まれた」ことが記されており、その中で「今後ESDは幼稚園から高校まですべての学校で推進されることが必要」になったと述べられている。このように国連サミットで採択され、学習指導要領にも明記され、「持続可能な社会の実現を目指していく(図5)」ことは、幼児児童生徒だけが取り組んでいくことではなく、全世界が一丸となって目指していく最重要事項であると捉え、沖縄県教育委員会としても推進しているところである。しかし、実際のところは中教審答申「令和の日本型学校教育」が打ち出されてからまだ間もなく、幼稚園から高校まで、現学習指導要領が完全実施されてから日も浅いという状況である。それらを踏 まえて、プロジェクト研究に新しいテーマで取り組む初年度は、「『持続可能な社会の創り手』としての意識を高揚する教育」の充実を目指していくこととした。ここで、「創り手を育成する」という表現ではなく、「創り手としての意識を高揚する」という表現にしているのは、現段階では、予測困難な時代に向かって子供自身が「持続可能な社会の創り手」として育っていくことに対しての意識がしっかりと浸透しているかということに少し不安が残る状況であることから、まずは「意識を高揚」していくことを初期段階として設定したからである(図6)。
そこで、今年度の理論研究を進めるにあたっては、持続可能な社会づくりの構成概念である「6つの概念」と、ESDの学習指導で重視する能力・態度である「7つの能力・態度」を念頭に置きながら、学習指導要領に基づいた授業づくり「各教科における授業デザイン」を提案していく(表1・表2)。その中で、子供に「今だけではない、ここだけではない、自分だけではない」という目的意識と相手意識をもたせながら、「時間・意識・人間を超えてできること(教育)は何か」を子供に考えさせていけるような授業デザインにしながら提案していく。その際、具体的な授業デザイン、具体的な実践例となるように、「令和の日本型学校教育」として求められている「主体的・対話的で深い学び」、「個別最適な学び」、「協働的な学び」、「ICTの活用」の視点を取り入れて、教育現場ですぐに実践として生かせる具体例を盛り込んだ授業デザインを提案する。
(4)沖縄県教育委員会「沖縄県学力向上推進プラン・プロジェクトⅡ」における総括目標・長期目標
沖縄県教育委員会が発行している「PPⅡ」の中に、学力向上の全体構想図として「学力向上推進マネジメント構想図」が掲載されている(図7)。その図の中心には、学力向上を推進する柱として「主体的・対話的で深い学び」と「カリキュラム・マネジメント」があり、その先にある総括目標として「幼児児童生徒一人一人に『生きる力』の基盤となる新しい時代をつくるために必要とされる資質・能力を育む」ことを設定し、長期目標として「豊かな創造性を備えた持続可能な社会の創り手となる幼児児童生徒の育成」が設定されている。このように、沖縄県の教育施策の中でも、長期的に「持続可能な社会の創り手」を育成していくことが求められている。