R5_プロジェクト研究

Ⅰ はじめに

 「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」という、いわゆる「学びに向かう力,人間性等の涵養」は大変奥深く、その正解の姿・形を探究することは尽きない。このことは、学びが学習者である児童生徒のものとなっているか、ということを改めて教育者や授業者に問いただしているとも捉えられる。特に、今の児童生徒たちが「主役」となる未来社会は、より変化の激しさが増すと言われている。そこで直面するであろう多様な課題に、柔軟且つ逞しく対応するためには、学びに向かう力を育成する教育の充実が求められている。そして、その充実のための手立てとして、キャリア教育の視点を意識した教育活動を推進していくことが鍵になると考える。

 このような中、高等学校では令和4年度入学生から『高等学校学習指導要領(平成30年告示)』(以下、『指導要領』)が施行された。「探究」や「論理」を冠した新設科目の設置というだけではなく、本格的に観点別学習状況の評価が導入されたことに伴い、学びに向かう力の育成や「主体的に学習に取り組む態度」の見取りに困惑している声が聞こえている。併せて、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の必要性を再認識している姿が見られる。また、選挙権年齢や成人年齢が18歳に引き下げられたことに伴い、高校生にとって今まで以上に社会参画がより身近に感じられるようになった。しかし、学校教育の中でキャリア教育の視点についての認識は弱く、特に各教科等の学習において、それを意識しながら授業が展開されているとは言い難い現状である。

 当教育センターでは、令和4年度プロジェクト研究テーマを「学びに向かう力を育成する教育の充実―未来につなぐキャリア教育の視点を通して―」と設定し、中学校を対象に実践研究を行った。教職員だけではなく生徒もキャリア教育の視点について理解を深めることを目指し、学習用動画「キャリア発達 新たな一歩」を作成して特別活動(学級活動)で活用した。各教科の学習では、キャリア教育の視点を反映させた見通しと振り返る活動が行えるシートを作成して「未来シート」と命名し、単元デザインに取り入れて実践した。また、各教科等の特質に応じて、パフォーマンス課題やOPPシート等も工夫しながら取り入れて実践を展開した。これらの実践研究の結果、各教科等の一単元においてキャリア教育の視点を取り入れながら学びに向かう力を育成した取組を例示することができた。一方で、児童生徒のキャリア発達を一段と促しながら、学びに向かう力を育成する計画的・継続的な取組が課題の一つとして挙げられた。

 以上を踏まえ、本研究では高等学校に研究協力校・研究協力員を位置付けて上記テーマで研究を行う。具体的には、高等学校1学年を主たる研究対象に各教科・科目等の目標()に留意しながら、一単元における学びに向かう力を育成する授業を実践し例示する。その際、キャリア教育の視点とパフォーマンス課題の関連性に着目しながら単元デザインを行う。何より、県内各高等学校に汎用性のある実践となることを目指し研究を進めていく。そして、本研究終了後は、「成果物」の一つとして学校現場へ研究内容を提供し、学校教育の充実や学校支援に資することを目指す。なお、以下の7点を主な研究方針とする。

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Ⅱ 研究内容

1 学びに向かう力とその育成について

(1) 学びに向かう力について

(2) 学びに向かう力を育むために

2 未来につなぐキャリア教育の視点について

(1) キャリア教育の視点について

(2) 未来につなぐキャリア教育の視点にするために 

(3) 「未来課題」の充実に向けて 

3 研究協力校について 

Ⅲ 実践研究その壱

 実践研究その壱は、実践研究その弐のウォーミングアップになるように設定した。[校内研修]❶「キャリア教育 はじめの一歩」は、教職員用研修動画を用いた「キャリア教育」について理解を深める研修である。同様に【特別活動】「キャリア発達 新たな一歩」も児童生徒学習用動画を用いた。[校内研修]❷「主対深の実現に向けた授業改善」については、当教育センター主事が講師となって取り組んだ。事前にプロジェクト研究委員会において研修内容を吟味し、特に本稿の表1~表2、及び図4~図7が先生方にとって「腑に落ちる」ように工夫し、ワークショップ形式の研修を企画した。次頁より各内容の様子を紹介し、その効果等について考察する。 →続きはこちらから

Ⅳ 実践研究その壱の考察

1 [校内研修]❶「キャリア教育 はじめの一歩」の考察

2 【特別活動】「キャリア発達 新たな一歩」の考察

3 [校内研修]❷「主体的・対話的で深い学びによる授業改善」の考察

Ⅴ 実践研究その弐

 実践研究その壱を踏まえ、実践研究その弐を行うことにした。各教科等における担当主事名と協力員名、及び実践単元名と「未来課題」の役割等の一覧を本稿の表8に示す。カリキュラム・マネジメントを意識して、一学年を中心に本研究を展開した。また、「未来課題」の役割が多岐にわたっている点に着目していただきたい。実施時期は各教科等、共通して9月中旬から11月下旬である。実践に向けて、協力員と各教科等担当主事による研究協議を何度も重ねた。さらに、主事同士でも思考力育成の研修を実施したり、特別支援教育に関するリーフレット作成を通して協力校への支援体制を整えた。

 実践の様子等については、各教科等個別に紹介する。特に、各教科等の実施科目における科目の目標()「学びに向かう力」を踏まえ、実施単元における「未来課題」を提示している点に注目していただきたい。加えて、各実践全てにおいて【指導と評価の計画】、【授業の実際】、【「未来課題」の実際】、【実践の効果】の順に提示することとした。その際、観点「主体的に学習に取り組む態度【態】」の評価基準(ルーブリック)も例示した。これを踏まえ、【「未来課題」の実際】では、A評価やB評価となった生徒の作品を紹介している。 →続きはこちらから

Ⅵ 実践研究その弐の考察

1 「未来課題」に対する生徒の考察

2 「未来課題」に対する協力員の考察

3 学校全体における変容

Ⅶ 本実践の普及

ダウンロード資料

手順1.

まずは、「研修マニュアル」をダウンロードしましょう!
(2ページ目以降に配布資料もついています。)

手順2.

研修マニュアルを確認したら、動画をダウンロード(クリックすると別画面が開きます)して音声チェックをしましょう。


Ⅰ 教職員研修用

「キャリア教育」はじめの一歩 ~目指す児童生徒像×「4つの力」~

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「キャリア教育」はじめの一歩 研修マニュアル

Ⅱ 児童生徒用

「キャリア発達」新たな一歩 ~自分×「力」×未来~

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「キャリア教育」 新たな一歩 研修マニュアル

Ⅷ まとめ

1 成果

2 課題と今後の展望

Ⅸ おわりに

 本研究は、当教育センターのプロジェクト研究として全所体制で取り組んだものである。教育庁県立学校教育課主幹の「授業改善推進事業」や、義務教育課も含むキャリア教育担当主事との連携も図りながら遂行することができた。各方面におけるサポートに謝意を示す。何より、協力校あってこそ実現した研究である。改めて、下地校長はじめ授業実践に取り組んだ研究協力員、及び全教職員に感謝する。とりわけ、計画段階から親身になって関わっていただいた金城教頭と研究主任の神谷教諭に深謝する。県指定研究の深化や授業改善の一助になると前向きに捉えて、校内研修等を企画してくださった。この一連の取組が、今後の教育活動に効果的に活用されることを祈願する。

 「プロジェクト」とは「新しいものを考え出し、実用化するための研究や事業」である。今後もその真意に答えるべくプロジェクト研究を展開し、本県の学校教育活動の充実に尽力していきたい。

実践報告書

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